先見の明、ピエール・カルダンってどんな人
フランスのファッションデザイナー、ピエール・カルダン(Pierre Cardin)氏(98歳)が亡くなったとの報が話題になっている。
そこでピエール・カルダンの経歴等についておさらいしてみたい。
(ピエール・カルダンと他のデザイナーに関する年表を下部に記載)
ピエール・カルダンは、これまでデザイナーズブランドの服の売り方として定番だったオートクチュール(オーダーメイド一点物の高級服)から、プレタポルテ(既製服)へと転換。ファッションデザインの普及を重視し、デザイナーズブランドを大衆化したことで一世を風靡した。
また自らの名を冠したライセンスビジネスを生み出し、その後に続くデザイナーズブランドの礎を築いたことでも知られる。
そのデザインは服だけにとどまらず、飛行機、自動車、家具、映画衣装等、幅広く手掛けた。
元々は建築の道を志していたピエールだったが、17歳で服の仕立屋の弟子になり、その頃から婦人用スーツを専門にするようになったとのこと。
クリスチャン・ディオールで働いた後、1950年には自身のブランドを立ち上げ、フランス・パリの百貨店プランタン向けに既製服コレクションを提供して商業的に新天地を切り開き、既存のオートクチュール中心のファッション界に波紋を広げた。
また日本人モデル松本弘子の起用、当時日本で絶大な人気を誇っていた赤いシリーズのドラマ「赤い疑惑」への衣装協力など、当時、成長が著しかった日本に興味を持ったデザイナーでもある。
国際的ブランドとして日本で人気を博した後、ソ連、中国にも進出。
グローバル化の波に乗り、世界的デザイナーの地位を確立した。
2020年10月、ピエール・カルダンについてのドキュメンタリー映画「ライフ・イズ・カラフル!未来をデザインする男 ピエール・カルダン」が公開されている。
現在は、カラフルなピエール・カルダンとは違い、シンプルで機能性を追求したユニクロ、無印良品等が時代を席巻しているが、プレタポルテに着目して大衆を取り込み、人種にこだわらない画期的な思想で一時代を築いたデザイナー ピエール・カルダンの生涯を追ってみるのも面白そうだ。
■ピエール・カルダン関連年表
年 代 | 内 容 |
1883年 | ココ・シャネル(Coco Chanel)誕生 |
1905年 | クリスチャン・ディオール(Christian Dior)誕生 |
1922年 | ピエール・カルダン(Pierre Cardin)誕生 |
1927年 | ユベール・ド・ジバンシィ(Hubert de Givenchy)誕生 |
1936年 | イヴ・サン=ローラン(Yves Saint-Laurent)誕生 |
1946年 |
クリスチャン・ディオール(41)オートクチュールのメゾン設立 (ピエール・カルダン(24)も独立立ち上げに参加) |
1947年 | クリスチャン・ディオール(42)「S/Sコレクション」でパリデビュー |
1950年 | ピエール・カルダン(28)自らのアトリエを設立 |
1952年 | ジバンシィ(25)会社を設立。「モードの神童」と呼ばれる |
1953年 | イヴ・サン=ローラン(17)デザインコンクール・ドレス部門で最優秀賞を受賞。縫製はユベール・ド・ジバンシィ(26) ピエール・カルダン(31)オートクチュールを開始 |
1954年 | ジバンシィ(27)オードリー・ヘプバーンの映画『麗しのサブリナ』の一部衣装担当 ピエール・カルダン(32)「バブルドレス」を発表 |
1957年 | イヴ・サン=ローラン(21)ディオールブランドの主任デザイナーに |
1959年 | ピエール・カルダン(37)仏百貨店プランタン向けにプレタポルテのコレクションを発表 |
1960年 | ピエール・カルダン(38)パリ・コレクションに日本人ファッションモデル松本弘子を起用 |
1961年 |
ジバンシィ(34)オードリー・へプバーンの映画『ティファニーで朝食を』の黒いドレス等をデザイン |
1962年 | イヴ・サン=ローラン(26)自身のレーベル「イヴ・サンローラン(YSL)」を設立 |
1966年 | ピエール・カルダン(44)髙島屋、京王百貨店と紳士服部門で業務提携 |
1971年 | ピエール・カルダン(49)作品発表の場として、劇場や映画館、ギャラリー併設の「エスパス・カルダン(Espace Cardin)」開設 |
1975年 | ピエール・カルダン(53)テレビドラマ『赤い疑惑』(主演:山口百恵、三浦友和)衣裳全面協力 |
年表には、同時代のデザイナーの主な活動を入れ、ピエールと比較しやすくした。
それぞれのデザイナーたちが、信じられないような若さで独立し、成功を収めたことがわかるように、あえて年齢を入れてみた。
天才たちの軌跡(もしくは奇跡)のすごさがわかる。