LINEの「ふるふる」がなくなった件
「ふるふる」って知ってる?
「ふるふる」とはモバイルメッセンジャーアプリ「LINE」に「友だち追加」する方法の一つで、IDを交換したい人たちが、お互いにLINEの「友だち追加」の「ふるふる」をタップして、携帯を近くで振りあうと、双方の携帯に相手のIDが出てきて友だちになれるという機能だ。
「ふるふる、ですか?」
つい先日、職場の中でLINEのグループを作ることになった。
そこで年配の男性・墨田さんをグループに誘うために、まずは友達になろうとしたときのこと、墨田さんが
「ふるふるですか?」
と言ってきた。
でもQRコードの方が確実なので
「いや、ふるふるは中々つながらなかったりするので、QRコードでいきましょう」
といって、自分のQRコードを出した。
墨田さんは、QRコードの方法がよくわかっていなかったようだったので、墨田さんの携帯を貸してもらい、QRコードを読み取ってID交換をすませた。
その際、昔は確かにあった「ふるふる」という操作ボタンがなかったことに気づいた。
ネットで調べてみると、コロナ禍の中で「LINE」のお友だちを追加する仕組み「ふるふる」は、ひっそりと姿を消していたのだ。
2020年5月中旬のことだったらしい。
ふるふるの思い出
人より少し遅れてスマートフォンを買って、LINEをインストールした後に、はじめてアドレス交換をした際、「ふるふる」を若い女性としたときの感動は、おじさん特有のものなのだろうか?
飲み会の席でLINEのIDを交換しようということになり、5人くらいで「ふるふる」したのだ。
堀ごたつ式の個室の部屋で、みんな立ってテーブルの上で携帯を振り合った。
「あっ、このヌルハチってだれですか?」
参加した中で一番若い女性・高田が少し笑いながら叫んだ。
「ヌルハチは俺」
少しインテリ気味な三村が恥ずかしそうに手を挙げた。
「なんですか、このヌルハチって?」
高田が問いかける。
「ヌルハチは清の初代皇帝の名前よ。歴史の授業で習ったろ」
高田はキョトンとしている。
三村はきっとウケを狙ってヌルハチなんて名前を付けたのだろうが、若い女性・高田には全くウケていなかった。歴女でもなければ「ヌルハチ」なんて知らないだろう。
しかし、私の携帯の画面にはいつまでたっても何も現れない。
テーブルの上で携帯を振るだけで何か変化があるのだろうか?
と不安に思っていたら
「俺、いつもなかなかつながらんのよね」
若手の円城寺がつぶやく。
あっ俺だけじゃないんだと、少し安心する。
するとブルッと携帯が震え、画面にIDが表示された。
「YUMI」
と書いている。
「YUMIって出たよ」
いったい誰だろう?と思った。すると
「団彦一郎、来ましたー!」
一番若い女性・高田が、飛び跳ねながら自分の携帯の画面を見せてきた。
年甲斐もなく、かなり嬉しかった。
「ふるふる」っていいなぁ。と思った。
きっと、この「ふるふる」って機能がLINEを定番のメッセージツールにした、きっかけの一つだったのかもしれないと感じた。
LINEさん、なぜ「ふるふる」なくしたの
「ふるふる」はスマホの機能である
・加速度センサー
・GPS
・データ通信
を使っている。
加速度センサーは、携帯に内蔵されている振動を検知する装置で、「ふるふる」では、このセンサーでスマホが「振られた」ことを検知する。
この「振られた」ということがデータ通信でLINEのセンターに送られ、振られた携帯が、どこにある携帯なのかを「GPS」データによって位置情報を確認する。
そして互いに振った携帯が極めて近くにあることを判定してIDが交換できるのだ。
しかし、このLINEの「ふるふる」機能は、GPSの届きにくい地下だと使えなかったり、機能を悪用して、他人のIDを収集したりする人が出てきたのだ。
例えば、宴会の席で「ふるふる」で盛り上がっている横で、自分の携帯を「ふるふる」すると相手のIDを取ることができたりする。
また街を歩いているときに「ふるふる」をタップすると、歩きながらだと自然に加速度センサーが働くのか、偶然LINEを起動していた人のIDが表示されることがあるのだ。
このように意図せずにIDが盗用されることもあり、LINEは「ふるふる」機能をなくしたのだろう。
「ふるふるですか?」と聞いてきた年配の墨田さん
「友だち追加」で、すぐに「ふるふるですか?」と聞いてきた年配の墨田さん。
きっと私のような心に残る「ふるふる」の思い出を持っているのだろう。
セキュリティ面は心配だが、おやじとしては「ふるふる」を残すか、さらに上を行く「ペチペチ」とか「ツンツン」など、何か新しい機能を作ってもらいたいのは俺だけだろうか。
いつか墨田さんの「ふるふる」の思い出も聞いてみたいものだ。
※2021年5月、ふるふる機能が特許侵害で訴えられ約1400万円の損害賠償