高校時代、アンカーの英和辞典を友だちに借りてたなぁ
今の学生達は、ほとんど電子辞書やスマホを使っているのだろうが、我々の世代は当然紙の辞書を使っていた。
高校で指定のアンカー(学研)の英和辞典を買い、どれだけ汚すかを目標に、意味、構文、注意点などに黙々と蛍光ペンを引いたものである。

ご存知のとおり、アンカーは解説が丁寧で、洗練された例文も多いため、英語が苦手な人でもとっつき易く、単語数も精選され、最小の努力で最大の効果を出す辞書だと思っている。
紙の持つ一覧性、必要な場合は書き込みも可能で、発音記号を気にしながら音読したものである。
ところが、家でも辞書は勉強に使うため、英語の授業の時によく辞書を持って行くのを忘れていた。
そんな時は、英語が始まる前に、隣のクラスの金治(きんじ:仮名)のところに行き、
「金治、アンカー貸して」
と言って、いつも辞書を借りていた。
ちなみに金治は敬虔なクリスチャンで、好きな食べ物は、親の目を盗んで食べるカップヌードルだった。
ある時、英語の授業中、いつものように金治のアンカーで単語を調べていると
brassieres (bra):ブラジャー、女性が胸を支えるために着ける下着
に蛍光ペンが引かれていた。
小言の多い英語の羽田先生(仮名)の授業を真面目に受けている最中だったので、このブラジャーへのアンダーラインがツボにハマってしまった。
まるで「ながらトレーニングができるシックスパッド」を腹につけているくらい、腹筋が揺れた。
これが一カ月間続けば、お腹は板チョコのようにバキバキになっていたことだろう。
若い時に柔道で鍛えた私でなければ、急性腹筋障害か何かで、保健室に連れていかれるくらいの痛みだった。
でも、なんで金治はブラジャーにアンダーラインしてたのだろう?
授業が終わって隣のクラスに行き、金治に辞書を返す際、
「金治、お前、なんでブラジャーにアンダーライン引いとったんか?授業中、おかしくて腹が痛くなったやん」
と尋ねた。
すると、金治から予想もしない答えが返ってきた
「お前がつけたんやないか!お陰で誰にも見せれんようになったんぞ!」
「ええぇえぇっ」
全く記憶から飛んでいた。
金治は、少し怒った口調で、
「他にも、パンティとか、変な言葉にアンダーライン引いとったやろ!」
そういえば、以前辞書を借りた時に、パラパラめくりながらアンダーラインを引いた記憶が…
「ご、ごめん、金治。でも、また貸してね」
金治、すまんかった。
若気の至りとして、許してくれ。
あの時に戻って謝りたい。。。
今だったら、消せる蛍光ペンがあったのだが。。。