なぜ宮城県で新型コロナの感染拡大が起きてしまったのか
宮城県が燃えている。
一都三県が緊急事態宣言解除後にリバウンドしているという話題の陰で、宮城県の新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。
そこで、なぜ、今(令和3年3月25日現在)、宮城県が燃えているのか、公開されているデータを調べて考えてみた。
■「Go Toイート」の再開
ワイドショー等の中では、宮城県が感染拡大前の2月23日に「Go Toイート」のプレミアム付き食事券の販売を再開したことで、人々の気が緩み、飲食店や夜の街を起因とする感染爆発が起こったのではということを伝えている。
会食の際も話すときはマスクをして、アクリルパネルの設置や、換気が重要など、会食は感染を引き起こす重要な要因となっており、その会食を広げるきっかけとなったのが「Go Toイート」再開である。
ただし、感染拡大の理由は単に一つだけではなく、多くの要因が絡み合っているようだ。
■人流の増加
感染拡大を引き起こす要因の一つとして、会食のほかに、人流(人の動き)の増加がある。
■東日本大震災から10年
実は、今年は2011年(平成23年)3月11日(金)に発生した「東日本大震災」から10年目にあたり、記念事業が多くの被災地で開催されていた。
仙台市のホームページを見ると「震災10年関連事業」として、2月~3月にかけて多くの企画展やシンポジウム等、約20事業が開催されていた。
仙台は東北六県の中心地であり、首都圏等からも多くの取材陣や関係者等が集まったことが見込まれ、感染拡大の一つの要因になっていることが推察される。
【主な記念事業】
・旬の常設展 2020 冬「特集震災10年―災害を生きた人々」(R2.12.21-R3.3.21)
・プラネタリウム震災特別番組「星よりも、遠くへ」(R3.3.6-21)
・企画展「わたしは思い出す~10年間の子育てかさぐる震災のかたち~」(R3.2.10-R3.6.13)
・東日本大震災から10年つなごう!学ぼう!防災・減災パネル展 (R3.3.6-4.11)
・仙台防災未来フォーラム2021(R3.3.6-7)
■受験による若者の動き
また仙台市は全国でも有数の学都であり、若く活動範囲が広いために感染拡大を広げやすいともいわれる学生の数が多い。
下に各県の大学の学生数の表を上げたが、見事に感染が拡大した地域と学生数がマッチしている。
進学先があり、繁華街があり、転勤や出張で人が動く都市こそが、感染が拡大するところだということがよくわかる。
宮城県の県庁所在地・仙台市は、旧帝国大学の東北大学を筆頭に、国立の宮城教育大、私立の東北福祉大、東北学院大学など、大学が10校(国立2校、私立8校)あり、市内の学生数は約5万人。
国立の東北大学、宮城教育大の入試は、前期日程が2月25日、26日、後期日程は3月12日で、私立もその前後で行われていることを考えると、この時期に、例えば受験倍率が2倍と見積もっても、約25000人の受験生が合格を目指して仙台を訪れたことになる。
人口の多い感染拡大地域からの受験生もいて、感染拡大の要因の一つになった可能性もある。
■福島県沖地震の発生
更に、これに追い打ちをかけたのが、2月13日に発生した最大震度6強の福島県沖地震である。
仙台市でも震度5強の揺れを記録した。
1都8県におよぶ約95万2000戸の停電や、4県で少なくとも一時2.5万戸で断水の被害が発生したとのことだ。
専門家は、この地震発生によって、ボランティアや家族を心配しての帰省など、県外からの来訪者が相次いだのではないかと指摘する。
■仙台市民のモラルの度合い(?)
最後に、感染者数が突出している仙台市では、若年層を中心に、保健所の調査に行動歴を明かさないケースも目立ち始めているらしい。
そして過去多くの都市でクラスターをもたらした「昼カラオケ」や、飲食店でのマスクを外した会食が感染拡大の要因となったと、県や仙台市の担当者は分析している。
また感染経路のヒアリングにも非協力的な若者が多く、3月24日には、仙台市内の宿泊療養施設で療養していた男性患者がホテルを無断で抜け出し、居酒屋に行って別のホテルに泊まったり、勝手に家に帰っていたりした事案も出たとのことだ。
県はこの事件を受けて、ホテルの外出にかかる警備体制を強化し、今後無断外出で行方不明となった場合は、警察に通報するなど厳格に対応することにしたとのことだ。
■考えたことをグラフに落としてみた
飲食店の時短要請の解除が2月8日。
「Go Toイート」も再開され、一気に経済活動を促進したことで、爆発的な感染拡大につながったのだろう。
これに受験、東日本大震災記念事業を加えてみる。
グラフにこれまで起きたことを重ねてみると、見事感染の谷間に様々な出来事が重なり、起きるべきして起きた感染拡大なのかもしれないと感じてしまう。
あくまでも状況証拠を重ねただけであるが、結果として、感染を呼び込むために人を集め、来訪した人たちが会食しやすい環境づくりに力を入れたのだ。
行政が自ら感染拡大を促進したと言われても、否定することはできないだろう。