定年前にして惑い未だ天命を知らない

定年前のアラフィフおやじの呟き、思ったことを綴る

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子どもの頃の思い出(検尿)

 

子どもの頃の嫌な思い出の一つが「検尿」である。

 

小中学生には必ずデリカシーのない、変態みたいな奴がいて、試験管立てに入った、クラスメイトの小便の色を見て

「田中のしょんべん、ものすごく黄色い」とか

「加藤のは水みたいに透明やん」とか

「鈴木の、なんか白いのが混ざっている感じ」とか、人の検尿を見て自由に発言する。

 

人の小便を見て、いったい何が楽しいのか?

 

でも必ず、クラスに一人くらい、こんな奴がいるのだ。

担任の先生が

「検尿を前に持ってきてください」

というと、何故か、その変態までもが教卓のところに出てきて批評する。

 

忘れもしない、あれは中学校1年の時、検尿用の試験管のようなプラスチックの容器をカバンに入れて持ち帰った。

家に帰って、いつものようにカバンを床にポンと投げて、晩御飯までの間、テレビを見たりしていた。

 

晩御飯を食べ、

「明日は検尿があるから朝一番の小便を取らないといけない」

と話をして、検尿の準備のためにトイレの窓のところに紙コップと試験管を持っていこうとカバンを開けたときに事件が発覚した。

 

カバンの中で、教科書に押しつぶされてプラスチックの検尿容器が割れていたのだ。

 

真面目な中学一年の私の頭の中は真っ白になった。

 

今から学校に電話をかけて取りに行くには時間が遅すぎる。

頭をひねったが、いい考えが思いつかない。

 

「どうしよう」

 

と両親に相談すると、親父が何かゴソゴソしていたと思ったら、高さ5cmほどの風邪薬ベンザエースのガラス瓶を持ってきた。

 

「この瓶に入れて持っていきなさい」

 

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ベンザエースの小瓶

親父はベンザエースの薬瓶から薬を出して空瓶にして持ってきたのだ。

瓶の蓋をキュッと閉めて「これなら漏れんやろう」と呟く。

瓶は受け取ったものの、このベンザの瓶に小便を入れて持って行ったら、間違いなくクラスの笑い者になることが簡単に想像できた。

 

翌朝8時30分。

担任の先生が

「検尿を前に持ってきてください」

といって、先生と変態が教卓のところでみんなの検尿を待っているところで、一人だけ黄色い液体が入ったベンザの瓶を出すのだ。

 

きっと先生は「このベンザの瓶は?」と驚き

クラスの変態も「このベンザの瓶は?」と驚くだろう。

 

そして次の瞬間、

「ダンが小便をベンザの瓶に入れて持ってきたー!」

と変態が大声で叫ぶのだ。

 

日刊の学校新聞があったら、きっと明日の一面トップを飾る記事になるくらいのニュースだ。

みんなが驚く瞬間を「モニタリング」で録画しているのではないかと、隠しカメラを探したくなるくらいのネタだ。

 

翌日からの私のあだ名が「ベンザ」になるくらいの衝撃だ。

 

真剣な親父の気持ちは通じたが、

「ごめん、これに入れて持って行けない」

と親父に謝った。

 

親父はしきりに

「大丈夫、大丈夫。持って行かないと先生も困るから持って行け」

と言っていたが、さすがにベンザの瓶はなかった。

 

いかにも考えている風に 

「中に薬が入っていたから成分が検出されるとまずいから」

「液体を入れる瓶じゃないから小便が洩れるかもしれん」

などと肩を落とす親父に説明したが、絶対にベンザの瓶では持って行きたくなかった。

 

母親は、いたって冷静で

「先生に忘れたって言えばいいのよ」

とつぶやいた。

 

結局、翌朝、担任に「忘れた」と報告したら、新しい試験管をくれて、朝一番ではない、三番目くらいの小便を保健室横の便所で取り、職員室で待つ先生に提出した。

 

変態に尿の色を批評されることもなく、全く問題がなかったかのように全てが終わった。

 

「ベンザの瓶に入れなくて本当に良かった」

 

心の底から思った。

 

今でも薬の小瓶を見ると時々思い出す。

 

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雑記など

 

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