映画鑑賞録 さびしんぼう(1985)
2020年4月に他界した大林宣彦監督の「転校生(1982」「時をかける少女(1983)」に続く、「尾道三部作」の最終作。
「転校生」は『君の名は』のような男女の入れ替わり、「時をかける少女」は未来から来た人、そてし「さびしんぼう(1985)」は、過去からの異空間を超えた愛情表現か?
「尾道三部作」の話は良く知っていたが、今回鑑賞してみて「さびしんぼう」を見たのは初めてだったことに気づいた。
監督の故郷である尾道の坂や湾岸、渡船など、尾道に対する愛情が原風景として描かれている。
思春期の若者の初恋の切なさや、両親への反発など、揺れ動く感情を描いた作品だが、上映時間の関係もあるだろうが、もう少し丁寧にストーリーづくりをすれば、さらに魅力的な作品になるのではと感じた。
日本のアニメや映画(世界的にもそうだが)は、時間や空間を超えるものが多いが、大林監督の尾道三部作は、現代の日本アニメ隆盛の発端、きっかけにもなっているかもしれない。
原作は、山中恒さんの「なんだかへんて子」。映画「転校生」の原作も、同じ山中恒さんの「おれがあいつであいつがおれで」である。
童顔の富田靖子は、未だに愛らしい女優だが、当作品は、まさに年齢と童顔がマッチした旬の年代。今作品では1人4役をこなしている。
上映時間に縛られないドラマとして、対岸の街に住む百合子の背景や、お母さんの過去なども丁寧に表現して欲しかったが、その物足りなさが映画のいいところなのかもしれない。