メンソールのタバコは無くなるの?
フランシス・コッポラ監督の映画「アウトサイダー」
主演は、C・トーマス・ハウエル。マット・ディロン、トム・クルーズ、ラルフ・マッチオ、ロブ・ロウ、ダイアン・レインなどが出演した青春物の映画だ。
劇中、マット・ディロンは、メンソールを代表するブランド「KOOL」をカッコよく吸っていた。
映画雑誌ロードショーの特集などでも、
「俺たちのタバコはKOOL」
だと書かれ、高校時代は、タバコを吸うのなら「KOOL」、オーデコロンは「ポーチュガル4711」にしよう、と思ったものである。
2021年4月29日
FDA(アメリカの食品医薬品局)が、メンソールタバコをアメリカ国内で禁止する方針を示した。
若い頃に憧れた「KOOL」は、1933年、世界初のメンソールタバコとして誕生したのだが、誕生100年を目前にして、このまま無くなってしまうのかもしれない。
背景には、
・メンソール愛飲者はアフリカ系米国人の割合が高く、健康被害をもたらしていること
・清涼感があるメンソールはハードルが低く、若者層が喫煙するきっかけになること
・メンソールは普通のタバコに比べて禁煙が難しいこと
といったことがあるようだ。
タバコ会社側は、FDAの主張に「規制や禁止を裏付ける科学的根拠がない」としているが、昨今のタバコに対する風当たりは強く、その流れの中での動きのようだ。
メンソールタバコの状況
実は、メンソールタバコは、アメリカのタバコ市場全体の約3分の1のシェアを占めているらしく、FDAの主張が通れば、アメリカで販売されるタバコの約3分の1が市場から消えることになるのだ。
販売禁止となれば、アメリカでメンソールタバコの定番「ニューポート」ブランドを販売し、メンソールタバコが販売本数の55%を占めているイギリスのBAT(ブリティッシュ・アメリカン・タバコ)にとっては大きな打撃となる。(ちなみにアメリカのメントールタバコの販売の約35%はニューポートブランドということだ)
このニューポートブランドは、マールボロブランドに次ぐ、アメリカで2番目に売れているタバコブランドで、その会社自体の存続が脅かされることになるかもしれないほどの大きな規制となるらしいのだ。
ちなみにドイツなどのEU加盟国およびイギリスでは、若者の喫煙率を減少させるために、コロナ禍の2020年5月20日から、既にメンソールタバコの販売が禁止されており、アメリカでも既にカリフォルニア州やマサチューセッツ州など複数の州では禁止されているとのことだ。
FDAがメンソールタバコを問題視しているポイントは
・先に挙げたメンソール入りのタバコは吸いやすいこと
・依存になりやすく、禁煙しにくいこと
・爽やかで後味がすっきりしているので、体調が悪くても吸いやすいこと。
メンソールは咳を抑える働きもあるため、咳をしていても吸いやすく、咳が悪化していても気づかず治療が遅れるなどの危険性もあるようだ。
・初心者でも吸いやすいことで、肺の奥まで深く吸い込んでしまうこと
研究によれば、メンソールタバコを吸っている人は、ほかの喫煙者と比べて脳卒中を起こすリスクが2倍以上になること
メンソールタバコのあの噂は
ただし、昔、まことしやかに噂されていた「メンソールタバコを吸うとED(勃起不全)になる」という噂はウソということだ。(ひどい嘘だ)
喫煙は血管収縮作用があり、EDの要因のひとつと考えられているが、メンソールには血管拡張作用があるため、逆にEDを阻止する方向で作用するかもしれないということだ。
これまでEDの恐怖にビクビクしながらメンソールタバコを吸っていた、当時の若者たちにとっては、(そのときに聞けていれば)一時的な朗報だったかもしれない。
では日本でも販売禁止になるのだろうか?
EU、イギリスで販売が禁止され、アメリカで今後禁止となれば、当然、日本でもメンソールタバコは禁止になるかもしれない。
改正健康増進法の施行など、日本でもタバコに対する風当たりはますますきつくなっており、2020年10月のタバコ増税に伴い、JTはタバコを値上げせざるをえなかった。
既に外堀も内堀も埋められている状況だ。
メンソールに限らず、ますますタバコが吸いづらい環境になり、JTがタバコとは関係ない、製薬会社になったりすることは近い将来の話かもしれない。