定年前にして惑い未だ天命を知らない

定年前のアラフィフおやじの呟き、思ったことを綴る

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新型コロナ対策に対する昨今の考え方の変化 解決策は医療体制にあり

 

既に周知の事実であるが、新型コロナウイルス感染症は誰でもかかる可能性があり、市中感染が広がっている中で、飲食店だけを閉鎖しても感染を抑制することはできない。

 

昨年末、山猫総合研究所代表で、国際政治学者の三浦瑠麗の発言から、世間の論調が変わりだした。

東京都医師会らの「医療制度が風前のともしびになりかけている」という発言に対して異議を唱えたのだ。

三浦瑠麗の主張は以下のとおりだ

  • コロナ患者の受け入れを拒否している方々(医師会、民間病院)が、なぜか「医療崩壊の危機」を投げかけている
  • ごく少数の病院だけにコロナ患者を集中させた結果、そこが悲鳴を上げている
  • コロナ対応が始まって半年たっているのに、医療体制がこんなに簡単に崩壊してしまうかについての分析は1つもない
  • 感染症が冬に拡大することは春からわかっていたはず

ご存じのとおり、医師会とは「開業医」が加盟する団体であり、今回コロナ患者を受け入れている地域の中核病院などは医師会に加盟していない。

 

この彼女の勇気ある発言が発端になったかどうかは不明だが、昨今、コロナに関するコメンテーター等の方向性が大きく変わりつつある。

つまり、無症状者が感染を拡大させる新型コロナ特有の市中感染の広がりに対しては、飲食店の営業時短などは対処療法でしかなく、根本は医療体制の見直しだという論調である。

 

www.rbbtoday.com

news.livedoor.com

 

フリーキャスターの辛坊治郎も「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の改正に際して、医療機関に対する強制力、

例えば、病気の患者をこれぐらい受け入れろなど、政府や自治体が病院へ指導できるような法律が必要

と説く。

また辛坊氏は、神奈川県の黒岩祐治知事の「医療崩壊の可能性」の発言に対して、

(県知事が)県内の総病床数も把握してないのに、どうして医療崩壊と言えるのか。
総病床数のうち、何%をコロナ病床にしているかもわからないのに、逼迫という表現はおかしい

という論調だ。

  

厚労省医系技官で医師の木村盛世も、医療体制の問題に目を向ける。

新型コロナウイルスの致死性は他のコロナウイルスSARSやMERS、インフルエンザと比べて毒性が低く、この程度の感染者数で日本の医療崩壊が懸念されるのは、新型コロナを「指定感染症2類相当(一部I類)」という高レベルに指定してしまったため、新型コロナ患者の受け入れ病院が限定されてしまったことによる。これが医療崩壊危機の実態と述べている。

また三浦瑠麗と同じく、昨年の春以降、国や医師会は医療を総力戦の体制にしておくべきだったとも述べ、コロナにおける医療体制の問題に警鐘を鳴らしている。

そして、提案の一つとして、

国が感染症レベルをインフルエンザと同じ5類にまで引き下げれば、受け入れられる病床が一気に増え、それにより医療崩壊という危機は解消するはず

であると指摘している。

一方で、現在政府が行っているような、

医療崩壊を防ぐため」と称した外出自粛、飲食時短等の対策をすると、経済を止めると医療ではなく社会そのものが崩壊する

として、安易な時短要請等のための緊急事態宣言には反対の立場だ。

また日本には、世界で最も多いともいわれる160万の病床があるが、新型コロナに対応できる病床数はその2%の3万床しかないことが一番の問題と指摘している。

ただし、病床数や呼吸器を扱える医師を増やすことは簡単にはできないので、

「地域間搬送」と「高齢者対策」の2つの対策が政府として取りえる方策である

と提案する。

「地域間搬送」

昨年春にイタリアが医療崩壊を起こした時にドイツが重症者を引き受けたように、医療が逼迫している地域から患者をそうでない地域に送る仕組みづくりである。

首都圏や関西圏など、近隣地域間では同様の問題を抱えているため、例えば自衛隊のヘリ等を輸送班として協力してもらうなど、コロナ対応の日本国内で平準化して対応することが一つの提案だ。

「高齢者対策」

高齢者に重症化リスクがあることが問題なので、高齢者が、なるべく外に出ないようにするため、国や地方自治体は宅配サービスの充実や、体力が落ちてしまわないようなトレーニングの提供などの対策を講じるというものだ。

実際、非常に残念なのは、重症化リスクが高い高齢者が昼間カラオケに行ったり、対策をしていないことなので、そこを強めようということだ。

「カラオケを歌って死ねるなら本望」などと言っているのをテレビで見たりするとガッカリする。

そして木村盛世が強調するのは

緊急事態宣言によって一時的に陽性者が減っても、ウイルスそのものが簡単に消えるわけではない。

つまり緊急事態宣言を出して陽性者数が一時的に減ったとしても、あくまでも一時的でウイルスがなくなるわけではないこと。

早期発見・早期封じ込めをすればウイルスがなくなると思っている方もいるようだが、それは違う。

積極的疫学調査は、一時的に広がりを抑えるだけで、根本的な解決策ではないということ。

やはり最終的には医療体制を立て直していくしか方法はなく、このままでは「医療崩壊だけでなく“居酒屋崩壊”が起き、社会経済活動が立ち行かなくなってしまう」と、警鐘を鳴らしている。

 

news.yahoo.co.jp

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4月の緊急事態宣言の時に、「人と人の接触を8割減らせ」と発言したことで「8割おじさん」とも呼ばれている京都大学大学院医学研究科・西浦博教授数理モデルを駆使した分析を続けている。

「人と人との8割の接触を削減」という無理難題を突き付けたことから非現実的思想の人という風潮で扱われた経緯を持つが、

  • 緊急事態宣言が解除された後の第2波の襲来で7月中に都内の感染者数が1日100人以上になること
  • 秋以降の第3波の襲来

などを的中させている。

西浦教授の試算では、

今回の緊急事態宣言のような飲食店の時短を中心とした施策だけでは、感染者数は2カ月後も現状とほぼ同水準にとどまる

と分析している。

 

つまり、営業時間の短縮要請に応じた飲食店に対する協力金を1日6万円払っても、根本的にはなんの解決にもならないのではということである。

また厚労省医系技官で医師の木村盛世が言っているように、一時的に陽性者が減っても、ウイルスそのものが簡単に消えるわけではなく、飲食店の時短は、ただの対処療法でしかない。

 

日本の医療体制の問題点

日本は欧米諸国に比べると感染者数は圧倒的に少ない。

一方で、人口1000人当たりの病床数は13床で世界一の数でOECD平均の3倍近くある。

しかし医師数、看護師数はOECD平均並みで、病院、病床ごとにみると、かえって手薄な状況となっている。

(ヨーロッパ各国のコロナ重症者を受け入れているドイツは、医師数で日本の1.7倍、集中理療専門医では日本の7倍、日本は病院数、病床数、CT、MRIは多いが...)

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日独の医療体制比較、NIRA オピニオンペーパーNo. 54 | 2020 年 10 月、翁百合NIRA 総合研究開発機構理事/日本総合研究所理事長

また公立病院の経営改善化の流れで、地域の中核となる公立病院の病床数削減や診療所化、廃止、民間移譲、統廃合等が進められた結果、公立病院の割合がOECD加盟国と比べても低いため、他国では公立病院が中心に担っているコロナ病床増設のハードルが高いこともあるようだ。

今回の第三波では、患者数の増加に比べて、無症状者・軽症者が多く、重症者数の割合はあまり高くないと聞く。このため、無症状、軽症の患者を積極的にホテル療養に回すことで、医療体制の崩壊を防ぐことが重要だ。

 

これら各氏の意見を総合し、昨今のメディアの流れが医療体制強化に傾きつつある中、これを味方につけて

  • 看護職員等の待遇が民間病院に比べて優遇されている公立病院のコロナ専門病院化を更に進める
  • 政府や自治体の権限で、コロナ病床を増設(ドイツではコロナ禍の中、政府主導でICUを1万2千床増床)
  • 公立病院をコロナ専門病院化した際に、公立病院が抱える一般病床患者の民間病院への転院調整
  • コロナ患者があまり出ていない地域への患者移送など、全国的な患者分散計画の推進
  • 無症状、軽症者用のホテル療養の確保

等、新型コロナ患者に必要な医療・療養体制を確保することで、今回の波を乗り越えた方が、経済を痛めない根本からの対策になるのではないか。

 

 
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