ヨボセヨ、ディーン・フジオカです。
ある一時期、真剣に韓国語を勉強しようかと考えたことがある。
そのきっかけは、ある事業の打ち合わせで韓国にいる担当のキムさん(仮名)に電話をしなければならなくなったことからはじまった。
本来の担当が対応できず、能ある鷹として、いざというときのための「爪」をずっと隠したままの私にオファーが来たのだ。
早速、韓国語が堪能な職場の女性に手伝いを頼んだ。が、しかし、彼女からは
「団さんも、これからキムさんに頻繁にかけるようになると思うので、自分で電話かけたほうがいいと思います。言葉に困ったら、韓国の方だから英語も通じると思います」
と「チャングムの誓い」のハンサングンのような微笑みで言われた。
えっ、俺、韓国語だけじゃなく、英語も話せないんですけど・・・
バイリンガルどころか、ディーン・フジオカみたいに、いきなりトリリンガルになれってことですか?
残念ながら、私の隠していた爪の中には、韓国語や英語は入っていなかった。
外国語が話せない私から見ると、外国語が堪能な人は若干ドライというか、冷たく感じることがあるが、この時の彼女(ハンサングン)がまさにそれで...
えっ?それじゃ韓国語が話せない私一人でどうすればいいの?
ハンサングンは最低限の手伝いとして、
「とりあえず電話に出たら自己紹介をしてください。
ヨボセヨ。チョヌン イルボン 団 ラゴハムニダと言えばわかります。
韓国語と日本語は基本語順が同じなので
もしもし、私は日本の団です、という意味になります。
そして相手の名前の後に~イッソヨ?(いますか?)と言えばいいのよ。
相手がいれば電話に出てくれるし、相手がいなければ、
タシ チョナハルケヨ。(後でかけます)と言って切れば大丈夫だから」という。
そりゃあんたは大丈夫でしょう。だって韓国語話せるんだもん。
ハンサングンからすると自分の仕事でもないし、私の部下でもないのに秘書のように使われる、電話を取り次ぐだけの仕事をいやがったのだろう。
もしかしたら仕事ができるディーン・フジオカの私にひがんでいるのかもしれない。
私はハンサングンの発した言葉を手帳にカタカナで必死に書き取った。
当然、電話をかける勇気が中々出ない。でも韓国語堪能なハンサングンは自分の役目は終わったオーラが既に出ていて、今後、一切私の相談に乗る気はなさそうだ。
あぁそうですか。よし、じゃあ電話くらいかけてやるよ!
これで韓国デビューだよ。もしかしたらBTSみたいに日本発の韓流スターとしてスカウトされ、ビルボードに載るかもよ!
日本語が話せる担当が出ることを祈りながら若干やけくそモードで電話をかける。
プルプルプル・・・
「ヨボセヨ、〇×▲%□◎・□△&◎・・□・◎☆%$&・・・」
当然だが、韓国語のわからない私には何を言っているのは全くわからない。
カタカナを書いたメモを見て、とりあえずハンサングンに言われた通りに話す。
「ヨボセヨ。チョヌン イルボン 団 ラゴハムニダ。キム〇〇シ、イッソヨ?」
自分の韓国語の発音がどうなのかはわからないが、教えてもらったカタカナ韓国語を噛まずに言った。パクボゴムのように言い切った。
しかし先方はキムさんと電話を替わることなく、何か想定外のことを話している。
「▲〇×▲%□◎・□#△&◎・・□・◎*☆%$■&・・・」
もしかしたら間違い電話したかな?
発音が悪くてわからなかったのかな?
と思い、もう一度カタカナ韓国語で同じことを復唱する。
「ヨボセヨ。チョヌン イルボン 団 ラゴハムニダ。キム〇〇シ、イッソヨ?」
やはり、韓国側はキムさんに電話を替わることなく、訳のわからない韓国語を話している。
(この場合、本当は意味のある言葉を話しているのだが、私が韓国語がわからないから「訳のわからない韓国語を話している」という表現になる)
「こりゃダメだ」と思い、緊急脱出装置の発動だ!
「タシ チョナハルケヨ」
電話を切ろうとするが、韓国側はやはり何かを必死に話しかけてくる。
先方の電話を切らせないようにしたいという、その必死さだけが暗号のように伝わってくる。汗がでてきた。
自分の名前を名乗っている手前、今後の付き合いを考えると、先方が話している途中で無理に電話を切るわけにもいかず、途方にくれていたら、幸いにしてキムさんが電話に出てくれた。
団さん、いったいどうしたんですか?
「もうすぐ戻ってくるから電話を切らないで」って言っているのに、電話を切りそうになったと話していますよ。
「切らないで・・・」
私にとって「もうすぐ戻ってくるから電話を切らないで」という韓国語は、
「▲〇×▲%□◎・□#△&◎・・□・◎*☆%$■&・・・」
こんな全くの想定外の暗号を言われているようなものだった。
言葉を再現することもできない...
その後、無事キムさんと打ち合わせをして要件を終えたのだが、次からも、やはり言葉のわからないところに電話をかけるのはつらかった。
しかし、この後、私が電話をすると、キムさんがいない場合、韓国語ではなく英語で答えるようになった。
すでに私のことを学習されていたのだ。きっと、私から電話があったら英語で答えてと、キムさんが言ってくれたのだろう。
韓国語と違い英語なら、中学にニューホライズンで習った範囲で少し理解できた。
しかし電話をかけるときに私の話す言葉はただ一つ。
「ヨボセヨ。チョヌン イルボン 団 ラゴハムニダ。キム〇〇シ、イッソヨ?」
ディーン・フジオカは遠い。
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