老後をホテルで過ごすという選択肢
【目次】
ある女性の死
昨年末、ホテルに5年4か月滞在していた、1935年生まれの高齢の女性(84歳)の死がニュースになった。
女性は、大分県別府市のビジネスホテルで2014年11月から5年4か月間滞在していたという。
遺品は現金750万円のほか、指輪やバッグなど。
女性は「親族はいない」とも話しており、健康保険証などの身元が確認できるものはなかったとのこと。
ホテルは1泊4000円程度で、5年4か月の宿泊費は700万円を超えたが、きちんと払っていたそうだ。
女性は体調を崩し、市職員らが部屋を訪ずれて高齢者施設を紹介しようとしたが、女性は「ホテルが一番落ち着く」と申し出を断ったとのこと。もしかすると延命治療等はしたくなかったのかもしれない。
つまり、女性は79歳のときに1500万円程度の資産を持ち、別府のホテル住まいを決めた。
年金等で資金が補充されない場合、彼女の資産では、あと6~7年程度、90歳前後までホテルで暮らすことができたという計算になる。
彼女は、自分は90歳までは生きないだろうと思って、ホテル住まいを決断したのだろうか?
元俳優・矢崎滋さんの隠遁生活
別府で亡くなった女性のことを知り、ネット検索してみると、元俳優の矢崎滋さんのことが引っかかってきた。
名バイプレイヤーとして、特色ある役柄をこなしてきた矢崎滋さん。
清酒「白鶴まる」のCMに長年出演していたことでも知られているが、現在は芸能界を去り、地方都市のホテルで隠遁生活を送っているとのこと。
趣味である競馬の場外売り場が近くにある東北地方のとある田舎町(福島県白河町ととも言われている)のビジネスホテルにもう20年ほど滞在しているとのことだ。
本来であれば1泊1万円程度の部屋を、長期滞在ということで1泊5,000円、月に15万円払って泊まっているとのことだ。
矢崎さんが語っている試算では、一人暮らしする場合、生活費に月30万円程度はかかるので、ホテル住まいの方が、光熱水費、NHKの受信料のほか、トイレットペーパーの補充や部屋の掃除、冷蔵庫やテレビが壊れても交換してくれるなど、総合的に考えると合理的ということだ。
芸能界、俳優仲間たちなどとの縁を絶っての矢崎滋さんの隠遁生活。ネットでは終活としての合理的な生き方として、肯定的な書き込みが多く見受けられる。
ちょっとホテル事情を調べてみる
高齢一人暮らしの場合、アパートなどは孤独死を心配して貸してくれないこともあるようで、費用対効果が合理的なら、断られることのない「ホテル暮らし」も一つの選択肢なのかもしれない。
そこで楽天トラベルで実際にどのくらいお金がかかるのか調べてみた。
楽天トラベルではデフォルトでは100泊しか予約できないようで、大人1人、100泊101日、朝食付き、そして少し贅沢だが生活を楽しめるように大浴場付きのところを検索してみた。
すると地方の県庁所在地である香川県高松市で、100泊101日で446,819円のホテルが引っかかった。「さぬきの湯 ドーミーイン高松」というホテルだ。市内中心地にあり、街の散策にも良さそうだ。
1泊あたり約4,500円で、単純計算すると年間165万円程度かかることになる。
楽天ポイントは1万6500円くらい付いているが、ポイントサービスデーなどと絡めれば、もう少し増やすことができるかもしれない。
ホテルの部屋の広さは15㎡(4.5坪=9畳)
チェックイン15:00/チェックアウト11:00
フロントの無料ドリンクサービスがある。
アルコール(金麦、角ハイボール)、ソフトドリンク(水、アップルジュース等)
朝食 6:30〜9:30(最終入店 9:00)
バイキングメニューで、客が毎日食べても飽きがこないよう、日替わりで小鉢のご提供や味噌汁の具材の変更、季節によって旬の野菜を使用するなどの工夫を凝らしている。
大浴場付き
利用時間 15:00~翌10:00まで
内湯・外湯(露天風呂)、高温サウナ、水風呂
湯上り後には、休憩所で小さい棒アイス、乳酸菌飲料が無料になっている
夜食
夜鳴きそばのサービスがある(無料)
毎日 夜21:30~23:00まで
部屋の仕様
ベッドはセミダブルで、上質な眠りにこだわるシモンズベッド社製
枕は、部屋に置いているドーミーインオリジナルの枕のほか、フェザー、低反発、パイプなど、複数の貸出枕を用意
※しかも長期滞在者用のランドリーコーナーあり
総合評価
高齢で食が細くなっていることを考えると、衣食住のうち、気にするところは衣服のところだけで、食べるところと住むところは、今回検索に引っかかった「ドーミーイン高松」だけで十分そう。かなり魅力的なプランだ。
高齢者施設という選択肢は?
同じ香川県高松市内のグループホーム、高齢者住宅、老人ホームについても調べてみた。
みんなの介護 へのリンク
同じ香川県高松市内のグループホーム、高齢者住宅、老人ホームは、安いところでは月額8万6千円から。(単純計算で年間約105万円~)
ホテルが、朝食付きで年間165万円で生活できるとすれば、遜色なく選択肢の一つになる。
しかし高齢者施設等は、介護認定が必要だったり、保証人は必須となるようで、身内のいない単身高齢者にはハードルの高い状況となる。
ホテルでの終活総評
毎日大浴場に入って、旅行で来ている家族連れ、ビジネスマンの話に耳を傾ける。
朝は日替わりのバイキングで好きなものを食べ、見慣れたレストランのスタッフ、ホテルスタッフと会話をする。
ホテルの部屋で好きな時間にテレビや映画を見て、掃除はホテルスタッフにお任せする。
自分には幸い配偶者や子供がいるが、
もし身寄りがない場合、終活を終え、身辺を身ぎれいにして、所有への執着をなくせれば、別府の高齢女性や矢崎滋さんのようなホテル住まいを選択する生き方もあるのかもしれない。
定年後を見据えた生き方として参考にしたい。
【2021年3月追加記事】