定年前にして惑い未だ天命を知らない

定年前のアラフィフおやじの呟き、思ったことを綴る

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ミュージシャンを目指していた彼

 

昔のビデオとの再会 

家の整理をしていたら、古いVHSのビデオテープが出てきた。

男の字で「DEAR ダンさん」と書かれている。

 

そういえば、昔の営業先で、

「俺、バンド組んでいるんです。是非、聞いてください」

と、言われてビデオテープをもらったことを思い出した。

 

かなり自信を持っていた若者で、就職先に満足していなかったので、もし歌が売れたら、その時の仕事から脱出したかったのだろう。

 

野心を持った奴だったので、大化けしてメジャーデビューしたら値打ちが出るかもと捨てずに取っていたが、あれから30年経ち、テレビやネットで彼を見たこともないので、多くの若いミュージシャンと同じように夢敗れたのだろう。

 

どんなバンドだったのかと、久しぶりにVHSのデッキにテープを入れる。

ガチャッとテープが飲み込まれたのを確認して、再生ボタンを押す。

 

狭いカラオケBOXのようなスタジオ。

画面の中心には黒いボディのベースを抱く彼の姿。

そしてボーカルマイクに向かって一言。

 

「レッツゴー」

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ベーシストを目指してみるか!

野太いカタカナのシャウトでバンドの演奏が始まった。

8ミリビデオ本体のマイクで拾った音も悪く、525本の走査線しかない3対4の映像は、長期保存した結果の磁気の転写で画面の端っこがピリピリしている。

 

低く、抜けの悪いこもり気味の声で、8ミリビデオのレンズを眼光鋭く見つめながら、おらんでいる。

「あ〜このままじゃ〜♪」

歌詞のフレーズは、彼自身の境遇を歌っているようだ。

 

「ごめんなさい。見ちゃった」

と、数十年前に戻って、彼に見てしまったことを謝りたいくらいのレベルのビデオだった。

これじゃあちょっと難しいかな...

 

情報発信のチャンスのハードルは低くなった 

今の時代ならきっと、編集した映像をYouTubeにアップしてメジャーデビューを夢見るのであろう。
しかし現実は、多くのバンドは視聴回数であるPVの低さに打ちのめされ、自分の立ち位置を知るのだろう。現実の厳しさもわかりやすくなったということになる。

 

あの頃はインターネットもまだ普及してなく、多くの人に知らせるすべがなかった。

今ならアイデア一つでのし上がることも可能だが、田舎の若者がVHSのテープをダビングして配っても、見てもらえる幅は交友範囲程度だ。

思い返してみると、時折、東京出張をしていた私にビデオテープをくれたのは、彼が私のことを「都会と繋がりのある人」と思い、メジャーデビューのきっかけづくりを期待していたのかもしれない。

 

新宿や横浜など、首都圏に住んでいれば、路上ライブでも考えるのだろうが、クラスの友達同士が下の名前で呼び合うような田舎では、路上で歌っても、近所のジジババか、小鳥や猪くらいしか現れない。

「大通りの団子屋のせがれが、駅前で歌っちょるがね」

などと、近所の散髪屋の話のネタになるくらいだろう。

 

やはりいろんなことが便利になっているのだ。が、しかし

今の若者はバブル時代の我々を羨むが、視点を変えて考えると、やはり今はいい時代なのかもしれないと思う。

しかし電波での放映権を持った大手メディアでさえも、安心して過ごせない時代。

マスコミの中核であった新聞も、広告をネットに奪われ、更に販売部数も落ち込んでいると聞く。変革が早く、本当に先が読みにくい。

 

コロナによって、更に国内外の経済地図が加速度的に変わりつつある中で、自分が今、大学生だったら、一体何をし、どこへの就職を目指すのだろう、と少しの間考えてみる。

変化に対応していけるものだけが勝ち抜ける厳しい時代がやってきそうだ。

 

「あぁ〜このままじゃ〜」

 

 

 

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